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社交不安症とは

社交不安症とは、公の場で話す、人前で何かを書く、集団の中で話をすることなど、他の人との交流場面(社交場面)で強い不安や恐怖を感じてしまう病気です。社交場面での不安により苦手な場面を耐え忍んだり避けたりすることで、さまざまな生活場面が妨げられる人もいますし、一部の生活場面だけが妨げられる人もいます。


誰でも就職面接や偉い人と初めて話すといった重要な社交場面で緊張を感じるものですが、社交不安症を抱える人は、何気ない日常的な場面でも恐怖を感じてしまい、また、その恐怖によって学業・職業などの日常生活が制限されてしまいます。

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検査
大学での社交場面で困っているリカさんの例

リカさんは、21歳の大学生です。彼女は他の学生達とグループになって話したり、授業で発表したりすることを恐れています。課題を発表する必要があるとき彼女は「他の人達のような自信がない…」「私が自信がないことに周りの人は気づくんじゃないだろうか…」「顔がまた赤くなるんじゃないか…」「私が赤面するのを見たら、みんなは私が変だと思うんじゃないか…」と考えてしまいます。このように考えながら、リカさんは火照りを感じ始め、実際に赤面しているのではないかと心配になり、汗もかき始めます。また、原稿をしっかりと握りしめたり、他の学生を見ることを避けながら、大急ぎで発表を終わらせます。席に戻ると、とても落ち込んでしまいます。このような出来事を繰り返す中で、リカさんは自分は他の人と違っていてダメな人間だと信じてしまっています。

職場での社交場面で困っているハルキさんの例

ハルキさんは37歳の会計士です。彼は権威がある人達(偉い人達)に話しかけたり、電話に出たり、電話で他の人と話すことを恐れています。彼は仕事の中で、クライアントからの電話を受けて、納税証明書について素早くかつ的確なアドバイスしなければなりません。しかしハルキさんは、電話が鳴る度に不安になってしまいます。電話が鳴ると彼は、「また上手く話せないのではないか…」「私が不安になっていることをクライアントは気づくのではないか…」「クライアントはそんな私を仕事ができない人だと思うに違いない…」「どうしていつもこうなんだろう…」と考えてしまいます。それから心臓の鼓動が速くなり、呼吸が浅くなって、頭がクラクラする感じがすることに気づきます。電話で話すとき、彼は小さな声で、やや口ごもりながら話をします。彼はクライアントから仕事ができる人だと思われるように、いつも低い声で話すということもやっています。電話が終わると、ハルキさんは電話応対ができない自分を恥ずかしく思い、そんな自分に対して怒りも感じてしまいます。

リカさんとハルキさんのように、さまざまな人達が、さまざまな社交場面で、さまざまな種類の症状と生活上の困りごとを経験しています。

実際に世界中で、多くの人が社交不安症を抱えています。生きている間に社交不安症にかかる人の割合は、13%ぐらい(7人に1人ぐらい)といわれており、うつ病、物質使用障害(アルコール依存症や薬物依存症)に次いで3番目に多い精神疾患となっています。

 

社交不安症を抱える方は、医療機関への受診につながるまでの期間が長いことでも知られています。これは社交不安症で悩む多くの人が、自身の問題をあがり症や緊張しやすい特性といった「性格の問題」ととらえてしまい、「治療可能な病気である」と思っていないことが主な理由といわれています。また、「そのうち慣れるよ」と言われるなど、周囲の人にも社交不安の問題を理解してもらえずに、一人で悩み苦しんでいる方も多くいます。

このような苦しみをもたらす社交不安症ですが、多くの研究結果が示しているのは、社交不安症がお薬やカウンセリングによって「治療可能である」ということです。特にカウンセリングの一つである「認知療法(認知行動療法)」は、社交不安症に対する治療として効果が高いことが知られています。

 

社交不安症の特徴や治療法については、「MSDマニュアル家庭版」でも詳しく紹介されていますので、ぜひお読みになってください。

それでは、社交不安症の認知療法がどのような治療であるかみていきましょう。

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